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『風の谷のナウシカ』第5巻 - 6
クシャナは、クロトワの顔を見ようともせずに、「瘴気の中で水を飲めるだけでも感謝しろ」「殿下ももの好きですぜ、こんなタンクの中にかくれてねえで、俺なんかすててさっさと行けばいいものを」「買いかぶるな、お前のために残ったのではない」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第5巻 - 5
「あの人たち、作物の種を大量に持っていた」とケチャが言った。「新しい土地を見つけたら蒔くんだといって」ケチャは、そのあとの言葉を詰まらせて、「でも…どこへいったって…」辛そうに俯くケチャの肩に、ユパは何も言わずに手を置く…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第5巻 - 4
「わたしの短気のせいでケガをさせたね」ユパの腕に両手を添えて、心配そうにユパの顔を見上げるケチャにユパは、「ケチャが怒るのは当然だ、わたしはケチャのそういうところが好きだよ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第5巻 - 3
皇兄に巻きついていた管たちは力を失い、くたくたとその足元にずり落ちていく、「これまでか」引きちぎられたマスクの下から素顔を覗かせた皇兄は、「超常の力がないために弟に組みしかれたこの100年、ずいぶん長かったがそれも終わりだ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第5巻 - 2
皇弟ミラルパは、集中室の浴槽の中で、浸されている薬液を大きく波立たせて引き裂くばかりに悲鳴を上げた、足の先から頭まで無数の管に繋がれたまま「イヤだ、イヤだ」赤ん坊のようにバタバタと手足をばたつかせる、その浴槽の外から「何をうなされている、弟」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第5巻 - 1
巨神兵は再び、井戸の子宮の羊水の中へ、眠りに落ちていく、沈みきるのを見届けて、男は突然、けたたましく、甲高い耳障りな笑い声を上げた、「おもしろい、気に入ったぞ、一刻も早くこいつを育てろ、こいつが歩く姿を見たい」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 20
そのとき、船の真下から、浮き砲台の火を追うようにして、まるで空に巨大な鎌首をもたげる巨大な蛇が巨大な顎をパッカリと開き、凄まじい勢いで伸びてくる粘菌の胞子の蔓、浮き砲台は間一髪で、蛇の顎から、粘菌の蔓が呑み込もうとして閉じる寸前で、上空に逃れた…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 19
「おはなし、判ります…」突然、ナウシカの言葉が、チャルカの心の中に聴こえてきた、ナウシカの肩ではテトが小さな手で小さな顔を洗っている、ナウシカはチャルカに話を続けた、「それを渡すくらいしか私にできることがなかったのです」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 18
一向に埒があかなかった、なおも自分たちの大発見を喜び合う博士たちにチャルカは苦虫を噛みつぶした顔で背中を向け、実験室を後にする、廊下を戻りながら、「大発見だと? たわけめ、これ以上国土を荒廃させて何が勝利だ!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 17
ナウシカは思わず口を抑えた、そうしないと嗚咽を漏らしてしまいそうになる自分に、「落ちつくんだ、ナウシカ」言い聞かせるように、しかし、次に今度は目に涙が、「泣くな、今は泣くな…」メーヴェに向かって踵を返しながら、「なんとかしなければ…」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 16
メーヴェの上から、ナウシカもチャルカも、はっきりとそれを見た、何本もの触手が雨のように地上へ、そしてその触手は、空で噴煙を上げつづける爆発を離れ、一つに固まって、巨大な根っこのように、「生き残った部分だけ地上に降りる気だ!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 15
いつの間にか闇の渦はナウシカとチククをすっかり囲みつくし、「お前のあたたかい心臓をこの手で握りつぶしてやる」その暗い触手をさらに伸ばしてくる、ついに靴の先に触れる、足もとから這い上がってくるのを感じながらナウシカは、「おびえたら、くわれる…」
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 14
突然、蟲が、周りを飛んでいたすべての蟲たちが、巨大な顎を開き、牙を立て、頭を上にもたげたかと思う間もなく、ものすごい勢いで上空に向かい雪崩を打つように雲の中につっこんでいく…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 13
「たとえ私たちが汚れそのものだとしても、なぜそのために木々や鳥や蟲たちまでが苦しまねばならないのでしょう、蟲たちだってたくさん死にます、王蟲たちの苦しみや悲しみは誰がつぐなうというのです」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 12
「クシャナが歌ってやがる!?」塹壕の外は何も変わっていない、次から次へと蟲が飛び交い、引き裂かれた人間の体が時折降ってくる、それが目に入っているのかいないのか、ただ歌を歌いつづけている、クシャナ。「冗談じゃねぇ、こんなときに…」
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 11
血まみれにひしゃげた頬にクロトワはニヤリと笑みを浮かべ、「くたばってたまるか…」、クシャナは、クロトワのボロボロの体を肩に担ぎ、背中に抱きあげた、右手に剣を握ったまま、再びクシャナは走りだした…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 10
「殺してください、どうせこの傷では助かりません」この程度の芝居を芝居と見抜けないクシャナはやはりいつものクシャナではない、クロトワは、「それでいい、蟲が来ればまだチャンスはあります」と心の中でつぶやきながら…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 9
意識の片隅でクロトワは、重コルベットの指令室のハッチが開く音を、微かに聞いた、横に立つクシャナの表情がさらに険しく変わった、クシャナは、右手に構えた剣を、ぎゅっと握りしめた、睨みつけて見上げるその姿は…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 8
重甲コルベットは、元の機体が見えないほどに、全身を蟲の群れの固まりに羽交い締めにされ、砕けて軋む無残な音が、上空を飛ぶケッチにも届くほどだった、「だめだ、とても助からねぇ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 7
ユパは、やってきたケチャと砂の丘に並んで空を見上げた、雲の上に、下弦の半月からすこし膨れた月がのぼっている、そしてその月をうしろにして、蟲たちが飛んでいくのが見えた…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 6
なんとか不時着したガンシップの、なんとか無事だった操縦席から体を引っ張り出すようにのぞき出た顔を見て、ユパは、砂を駆けってきた足をさらに早めた。「ミト、ミトではないか!」「な、なんと!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 5
テントに入ったケチャは頭から被っていた蟲の腸のマスクを両手でプハ! と上にはずし、「ハアッ、ハアッ」笑いながら息をつくケチャに、「フフ、ケチャ、よくがんばったわ」セライネもマスクをはずして笑った…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 4
「樹々が石化して崩れるにしたがい空洞は上へ上へとのぼっていくはずだ、のぼりきったとき森はどうなるのであろう?」「教えてくだされ、腐海が生まれてより1000年たつ、この世界のどこかにすでにそのような地が生まれておるのか」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 3
完全に冷やされたままの容器の中で、押し込められていた球体たちが、プチ、プチ、突起と突起の間にヒビが、割れた裂け目から、茎のような、幹のような、ミシミシと中から殻をこじあけるように…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 2
眼下に広がるサパタの村と、畑と、地平線の上には青い空と白い雲と、そしてさらにその先には…「いこう、南へ」南という言葉をのみ込むようにナウシカは、帽子のあご紐をキュッと締めた、肩にはテト…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第4巻 - 1
「チャルカ殿、まさか…」「皇弟さまは断を下されてしまいました、このときにあなた方が解き放たれたのは天祐というべきでしょう、ご老体も、戦闘員をのぞく部族を率いて少しでも早くこの地を去ってください」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 21
階段の先の回廊を、クシャナは一人、城の奥へと歩いていった。「ナウシカ、お前はお前の道をいくがいい、それも小気味よい生き方だ、私は私の血みどろの道をいく、親兄弟と殺し合う呪われた道をな」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 20
カイの、最後の一歩が、地を踏む、「カイ!」ナウシカが、カイの首からその地に飛び降りて、カイの首を抱きしめる、ナウシカに首を抱いてもらったまま、カイの、最後の声が、「クー」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 19
ナウシカは、自分が今まさに土鬼の集団に取り囲まれようとしていることよりも、「カイ!」目の前で苦しそうに喘ぐカイの首を抱きしめて、「立って、カイ、お願い!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 18
そこへ、クシャナから離れた、5騎のトルメキア騎兵が、「あなたたち?」「われらお守りします!」走りながら、ナウシカの左に2騎、右に2騎、そして背後にもう1騎、ナウシカを囲むように…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 17
次第に真正面に向いてくる砲口目がけて、クシャナの駆る馬が突っ込んでいく、騎兵たちもあとに続く、「てぇ!」ついに発射された砲弾は、後方を走る騎兵たちに命中、しかし前方の騎兵たちは一瞬早く…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 16
「わたしが拒否したらどうする」「ここを去って土鬼軍に加わり、あなたと戦う」「ハハハハ、おもしろい! だとするとお前は私だけでなく世界を相手に戦うはめになるぞ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 15
作戦全体の話を終えたクシャナは、続いてそれぞれ個別の指令を、「工兵! 突撃路開通の所有時間は?」「5分、いや3分でやります!」「砲兵は開通と同時に弾幕を襲歩にあわせて前方へ移動」「ハッ!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 14
「フフフ、よくもかき集めたものだな、まるでネズミのひっこしだ」「戦利品は指揮官の正当な権利だ!」「兵を死地にすておいてもか?」「だまれっ、叛逆者の分際で何をいうか!」…
文:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 13
「あとわずかでその者の正体をつきとめるところだったのだが、マニの僧正め、生命をかけてわしの眼をくらませおった」そう言いながらミラルパは、薬液の中にあぐらをかいて全身を浸からせた…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 12
アスベルは少年に渡された蟲の卵を手にして「卵を盗っても蟲に攻撃されないのか?」、少年は何でもないことのように「盗るのではないもの、お願いして、少しだけもらうんだ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 11
「森の人は、火をすて、人界を嫌い、腐海の奥深く棲まう者、蟲の腸をまとい、卵を食し…人間が腐海と共生できるとしたら…」そこへ、森の人が、蟲の体液でできた泡の壁の向こうから、中に入ってきた…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 10
「王蟲にあいたい…ユパさまや、父上や、谷のみんなにも…」ナウシカが思いを馳せるユパは、ナウシカの腕に包帯を巻いてくれたアスベルとともに、土鬼に撃墜されて、腐海に落ちたまま…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 9
クシャナのすぐ目と鼻の先で、わずかに残っていた双頭の蛇の旗と、わずかに残っていた部下たちは、吹き飛んだ、目の当たりにしてクシャナは…悲鳴も叫びも、声にはならず、ただ瞳だけが、悲しげに血走って、歪む…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 8
「なんでこんなところに瘴気が? 腐海から150リーグも飛んだんだぞ」だがまさにそのときクロトワが目の前に見たものは、ムクムクと積乱雲のように湧き上がる巨大な胞子の木、間違いなく、「腐海だ!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 7
「苦しい…たすけて…母さん…たすけ…」声が漏れてくる口を、ナウシカは塞いだ、自分の口で、血の溢れる兵の口を、唇で、溢れてくる血を吸って、離して、外に吐く、吸って離して外に吐く、吸って、離して…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 6
テトが、ナウシカの胸から顔を覗かせ、肩に回り、うしろから顔を寄せるナウシカの目に涙が浮かんでいた、ナウシカは、泣いていた、テトを片手で撫でながら、風で飛ばされないようおさえてあげながらナウシカは…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 5
赤ん坊を抱えたまま立ち上がるナウシカ、そばにはクシャナ一人、クシャナは、自分に向けられたナウシカの必死な表情に、いぶかしげに視線を返す、そのクシャナに、「この子たちをあずかって! お願い!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 4
燃えさかる村、煙にまかれる家々、その間に入り組む狭い道をナウシカのメーヴェは、両脇から音を立てて崩れ落ちてくる炎の合間を縫うように、飛びながら角を曲がり、回廊のように建物に覆われたスレスレを…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 3
「一つだけ答えろ、お前にこの仕事を命じたのは誰だ? 兄か、参謀総長か」クロトワの額に、嫌な汗がにじんで浮かんだ。「父君、ヴ王陛下御自身であらせられます」クシャナの表情にピクリと、冷たい光が走った…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 2
「人間は、動物も植物も欲するままにつくりかえられたというのだ」「多くの種は時間とともに消えていったが、いくつかの種は今も残っている、馬は昔は哺乳類だったという話だよ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第3巻 - 1
「クシャナの戦隊が全滅したときの模様を話してくれんか」「ぼくは見たわけじゃありませんが、半殺しにした幼虫を囮にして、宿営地に群れを呼び寄せたようです」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 17
「その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つべし…」僧正の声を聞きながら、ユパは、広く果てしのない野原を見ていた、どこまでも続く金色の草の向こうから、青い服を着た一人の少女、肩にキツネリスを乗せた…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 16
「大海嘯…よめたわ、お前の本心、はるか昔、わが皇祖が土鬼の地に降臨した際、土着の者たちにはびこっていた邪教の予言」皇弟は、カッと開いた手のひらを僧正に、その中央にも刺青の目が開き「背教者め!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 15
最後に、甲板に降り立った姿、戦艦から照射される光を背に、暗い影が浮かび上がった。 「しずまれ! かしこくも皇弟陛下のご降臨であるぞ!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 14
泡が、溶液の中を、上がってくるのは、息? 吐いているのは、ビーカーの底から、ピクッピクッと、動いている、生きている、ユパは信じられない思いで目を見張った、間違いなくそれは、「王蟲がはえている!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 13
風の谷の東北東200リーグ、塩の海の岸辺、この時代、人は海の恩恵からも見放されていた、海は、この星全体にばらまかれた汚染物質が最後にたどり着くところだったからだ…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 12
「この服、土鬼のおばあさんが娘さんの形見をわたしにくれたの、王蟲の血で真っ青だけどちっともイヤなにおいがしない、風の谷のわたしが、王蟲が染めてくれた、土鬼の服を着て、トルメキアの船で出かけるのよ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 11
「ミト…」「はい、ここにおります」「ユパを探せ…ナウシカにはユパの助けがいる…」「ハイ!」「おろかなやつだ…たったひとりで…世界を守ろうというのか…ナウシカ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 10
「大事なときに谷をあけるけど父はわかってくれると思うの、わたしの不安が、大海嘯だと知れば…」ミトの長い報告を聞き終えたジルは、ベッドに横たわったまま、静かに、「そうか…大海嘯と言ったか」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 9
「どうしたんだろう…急に心を閉ざしてしまった…教えて! 南には土鬼の国があるわ、そこで何かが始まるの?」「北ヘ、オカエリ…」王蟲は、ゆっくりとナウシカに背中を向け、そして去っていった…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 8
「ヤレヤレ、無残なことだ、皇帝もビダ族も王蟲を甘くみすぎとる、王蟲は神聖な不可触の生き物だと忠告したのじゃが…」「でもトルメキア軍は全滅したわ!」「ビダ族の戦士もな」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 7
クシャナは、腰から抜いた短剣を頭のうしろへ、三つに編まれた金色の毛を左手でつかむと、右手に持った短剣で根元から、切った。「そなたたちの無念忘れぬぞ、受けとれ、たむけだ!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 6
「ごめん…ごめんね、何もしてあげられない…」指の隙間から涙が落ちる、そのナウシカの手に、王蟲の子が、音もなく、口から金色の触手を伸ばして、そっと触れた。「?…おまえ…」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 5
「ひと揉みしてみよう、敵の意図がわかるだろう」「しかし、ご自身で出撃しなくても…」クロトワのご注進を、クシャナは最後まで言わせなかった、「深追いなさるな、殿下!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 4
「アスベル、先に乗って」「ぼくは、残るよ」「なんですって!?」「メーヴェの二人乗りはもうコリゴリだ」アスベルは、ナウシカをニコリと振り返り、「いくんだナウシカ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 3
「王位継承のためなら身内でも平気で売りわたす…王族とは元来そのような人々なのさ」次第にナウシカは返す言葉をなくし、聴こえつづける僧正の声が、どこかナウシカの知らない世界で鳴り響く絵空事のように…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 2
「失礼いたしました、やんごとなきお方の無理難題にはこの老体とまどうばかりです、わしは名もなき一従卒者にすぎませぬ、姫さまがポケットに何をしのばせておるものやら詮索せぬのが分というもの」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第2巻 - 1
腐海からせり上がってくるような別の船影を、ナウシカとアスベルはメーヴェから見た。「あれは!?」トルメキアのコルベットよりも巨大で重厚な姿、古代の要塞を思わせる独特なフォルム。「土鬼だ!」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻末「ナウシカのこと」
ナウシカは、ギリシャの叙事詩オデュッセイアに登場するパイアキアの王女の名前である…社会の束縛に屈せず、自分の感性のままに野山を駆け回り、草や木や、流れる雲に心動かしたその姫君は、その後どのように生きたのだろうか…
文:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 16
「蟲さえ住まない死の世界じゃ、きれいになってもしょうがない」耳に届くアスベルの声が、次第に途切れ途切れになっていく、ナウシカは、「わたしたちが汚れそのものだとしたら」その言葉を、声には出さなかった…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 15
「こないで!」叫ぶナウシカを大きな木に追いつめるいくつもの足音、木の幹を背に立つナウシカをつかまえようとする何本もの手。「何もいないったら」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 14
自分がどこからどれだけ落ちてきたのかわからないくらいに、そびえ立つ腐海の木々ははるか頭上をドームのように覆い、珊瑚のようにキラキラと光っていた、まるで、遠い星空を見上げているようでもあった…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 13
叫びながらナウシカは、慌てて制動をかけようとする、その顔のすぐ横で、ナウシカの肩に爪を立て、自分たちが切る瘴気の風に小さな体を思い切り踏ん張らせるテト…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 12
折り重なるように倒れている近衛兵たち、その隙間に膝をついたクシャナは、一人ずつ体を抱き起こし、手を握り、だが、息のある者は、ない。「盾となってわたしをかばったそなたたちの忠誠を忘れぬぞ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 11
バージから身を乗り出して手を伸ばし、顔にマスクを戻すように請う年寄りたちに、ナウシカは、親指を突き出して、大丈夫、とニッコリ笑ってみせた…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 10
操縦桿を握るナウシカはしっかりとマスクで鼻と口を覆い、「こんなに深くまで腐海に入ったのは初めてだ、どうしたんだろう、胸がドキドキする、この空には敵意がある、でも王蟲の声じゃないわ」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 9
風の谷、城にはいつもにも増して風が強く吹きつける、族長ジルの部屋をユパが訪ねている。 「ジル、暇乞いに来た」「やはり、腐海に戻るのか」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 8
城の格納庫から進みでたガンシップ、エンジンはすでに始動している、滑走路に立つユパが見上げる操縦席には、逆光の中、後席にミトじい、前席には、テトを肩に乗せたナウシカの影…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 7
「いったい姫さまに何があったのでしょう? あの果たし合い以来すっかり変わられてしまった、食事もロクにとっておりません、無理矢理笑顔をつくっているのがわしらにはよくわかります」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 6
「されど、ヴ王陛下はこうも申されておられます、秘石をもたらすならば最高の戦功となし第1級の栄誉もほしいままと」「ないものはないのだ」興味なさそうにクシャナはクロトワから目をそらし…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 5
ナウシカは、長老の樹の太い幹にそっと手を当て、その立派な枝や葉たちを、ただ見上げた。誰も、何も言わなかった。太い幹を、皆が囲み、火がつけられ、樹は燃え上がり、煙りを上げ、やがて、焼け落ちた…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 4
ナウシカは、正面に立つトルメキア兵を見据えた目をユパに向けようともしない、そのナウシカの表情にユパは、「これがあのナウシカか、攻撃衝動に燃える王蟲のように、怒りで我を忘れている…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 3
「逃走したペジテのブリッグに間違いありません」部下の言葉に、「蟲つかいどもをおろせ」と命じた指揮官の、金色に光る兜のようなマスクの額には、コルベットの翼と同じ紋章が刻まれている…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 2
少女は、手のひらにのせた小さな、石? だが自然にできた石では決してない、石のような何かを差し出して、「これを、兄に…兄に渡してください…わたしは、ペジテの長の娘、ラステル…」…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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『風の谷のナウシカ』第1巻 - 1
腐海とは、滅亡した過去の文明に汚染され不毛と化した大地に生まれた新しい生態系の世界をいう。蟲たちのみが生きる、有毒の瘴気を発する巨大な菌類の森に、いま地表は、静かに覆われようとしていた…
原作:宮崎駿 / 語り:物語屋
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